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暗闇が迫る中、五人の少年たちは途方に暮れていた。
濃紺色の剣道の胴着は、闇夜に紛れるのに都合がいい。
野宿でも構わなかったが、地べたに寝転ぶのは、やはり抵抗がある。
どこか泊まれる場所を探さなければならなかった。
空はすでに薄暗くなり、町の明かりもぼんやりと灯り始めていた。
急に地面が石畳になり、暗い感じの建物が並んでいた。境内の近くまでやってきているらしかった。
〈今夜の泊まる場所を見つけなきゃ〉と横井岳人が四人に手話で話しかけた。
岳人の表情は焦りを隠せなかった。
〈野宿は嫌だな・・・野良犬がいるもんな〉
大和が頼りな気に呟く。
〈野良犬がいるの?〉
岳人が訊ねた。大和が遠くの藪を指さした。
〈さっきから、向こうの方で吠えてるよ〉
大和は手話を苦手としていたが、この状況でどうにか結論を出さなければならなかった。
メンバー間の意思疎通が手話だからだ。
手話は完全な闇になれば使えなくなる。
〈誰だよ!?後ろにいるの〉
猿渡飛雄が突然、驚いたように後ろを振り返った。
彼の目線の先には、狩野陽向が座り込んでいた。
〈どうした、陽向?〉
佐々剛介が冷静に問いかけた。
〈腹がさっきからずっと違和感があって…変な汗が〉と陽向は苦しそうに手話で説明した。
顔は青ざめ、額には冷や汗が浮かんでいる。
〈食い意地張って、だご汁を何杯もお代わりするからだ〉
岳人が冗談めかして言うが、その目は困惑でいっぱいだった。
〈俺の分まで手を出しやがって〉
猿渡飛雄も手話で責めるが、彼の顔にも焦りが見える。
〈だって、いらないって言ったろ〉
狩野陽向が反論する。
〈あれは古かったんだ。変なニオイがした。だからいらないと言ったんだ〉
飛雄が返すと、陽向は〈ああ、痛い…〉と苦しそうにうめいた。
〈これは弱ったな…〉
松井大和がため息をつき、周囲を見渡した。
どこか休める場所を探そうと必死だった。
〈どこか休める所を…でももうあの店へ引き返すのは無理だな〉
飛雄が言いかけたとき、誰かの影が近寄ってきた。
「いかがなさいました?」
一人の女性が心配そうに近づいてきた。品の良さそうな着物の、若い女性だった。
「はい。仲間が急に腹痛を起こし苦しんでまして…」
大和が答えると、大黒静香は優しい笑顔を浮かべた。
「それは大変ですね。もしよろしければ、私のところにいらしてください」
静香は快く申し出た。
大和はためらいながら言った。
「あの、恥ずかしながら、我々はお金を持っていないんですが…」
「ええ、構いませんとも。いらっしゃい」
静香の案内で、彼らは大黒屋へと向かった。
大黒屋は町の中でも立派な造りの家で、温かい灯りが漏れていた。
静香は手早く玄関を開け、五人を招き入れた。
「こちらへどうぞ」
彼らはスニーカーを脱ぎ、中へと入った。
広い部屋には畳が敷かれ、心地よい香りが漂っていた。
つづく
