28
気がつくとテーブルの横には、一人の男が立っていた。
マシンガンタイプの武器を片手に持ちながら、こちらへやってきた。
その男に僕らは見覚えがあった。彼は手話で話してきた。
〈ドローンを撃墜したんだってな?〉
加田崎は僕に言った。
〈えっ、いや。銃を向けたら、勝手に落ちてきました。加田崎さん、いつの間に手話を……〉
僕らは目をまん丸くした。この人、手話が使えたんだ。
〈どうした? 狐に化かされたような顔をして〉
平石は加田崎に訊ねた。
〈あなた、耳は悪くないのに、なぜ手話を……〉
〈親がろう者なんだよ。兄貴も難聴。家での公用語は『手話』だ〉
彼は二人の目の前に、青と白が鮮やかなプラスチックのマシンガンを差し出した。
〈今のところ、こいつが最強の兵器だ〉
加田崎はマシンガンの操作について説明し始めた。
〈こいつには二つの働きがある。ひとつは銃としての機能。これは今までの銃と一緒だ。もうひとつは衝撃波を発射する機能だ〉
加田崎は平石にマシンガンの側面のボタンを指し示しながら、手話で説明を続けた。
〈いいかい? このボタンを押すと、強烈な……あぁ、まだ押すんじゃない〉
平石は加田崎の制止も間に合わず、手元のボタンを押してしまった。
途端に加田崎は身体を硬直させ、両耳を手で押さえてその場で卒倒してしまった。
僕らは恐る恐る加田崎の顔を覗き込んだ。
〈あ、あの、大丈夫ですか?〉
加田崎は泣きそうな顔をしていた。
〈君たちには分からんだろうが、こいつからは物凄い音が出るんだよ〉
そういえば、重度の難聴の僕ですら、肌で大音響を感じた気がする。
僕の場合、補聴器の保護回路が作動するので、耳へのダメージはないが。

僕と平石は、加田崎の身体を引き起こした。
「これで三度目だ。何で俺ばっかりこんな目に」
加田崎はボヤいて、よろけながら歩いていった。
つづく

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