ぼくの名前はまさはる。

この日は友だちのたけしの家で学芸会の時代劇の練習をやった。劇の背景画を描きながら、二人で殺陣の練習をするのだ。

ところが、たけしったら、よろけて絵の具でカーテンを汚してしまった。


ぼくらは青ざめた。カーテンを外したけど、一階にはたけしの母さんがいて、洗濯機が使えない。二階の洗面台で洗うと、かえって汚くなってしまった。

そこで、漂白剤を買おうとぼくは提案した。

近所のスーパーではぼくの母さんが働いている。母さん、わけを知ったら怒るだろうな。見つからないようにしなくちゃ。

ぼくは劇で使う衣装を着て、あみがさを持って外に出た。

スーパーの通りから見たかぎりでは、母さんのすがたは見えなかった。休憩時間なのかもしれない。ぼくは勇気を出して、店内に入っていった。


「あっ、これだ」


漂白剤はすぐに見つかった。レジへ持っていくと、ちょうどレジ係が交代するときで、かわりにやってきたのは、ああ、なんてこったい、ぼくの母さんだったのだ。

ぼくはとっさにあみがさをかぶって顔をかくした。あみがさにはのぞき穴がついていて、深くかぶっても外が見えるようになっていた。

そこからのぞいた母さんは、いそがしくてぼくに気づいていないようだった。ぼくは支払いをすますと、急いてスーパーを出た。



カーテンは完全に白くならなかったけれど、それでも汚れが気にならない程度にはなった。


ぼくたちはホッと胸をなでおろした。


家に帰ると、母さんはもうスーパーから帰ってきていた。ぼくは「ただいま」と言った。すると「お待ちなさい、せんたくざむらい」と、母さんにきびしい声でよびとめられた。


「どうしてあんなかっこうで来たのか、ふしぎに思って、たけしくんの家に電話してみたの。そしたら、カーテンが絵の具で汚れてるって、たけしくんのママがかんかんに怒っていたわ」


「ぼくのせいじゃないや。たけしがよろけて」


「んまぁ、友だちのせいにするつもりなの?」


結局、この後一時間もガミガミ怒られた。
なんてツイてない日だ。


今回のことでぼくは三つのことを学んだ。


スーパーにさむらいのかっこうで行かないこと、レースのカーテンのある家でチャンバラしないこと、親は見てないようで、わが子のことをちゃんと見てるってことさ。

 

おわり



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