2 ウインドベルの光

ウインドベルは、自然と文化が調和した、珍しい近代都市の一つだ。

街の遊歩道は、小川や木立で彩られ、市民に安らぎを与えている。

ここでは、野生動物の保護も積極的に行われており、市民は自然と共生する生活を享受している。

レオ・ネルソンという男性について話そう。

彼は10年前、当時はまだ農村地帯だったウインドベルを都市化するという公約を掲げ、市長に当選した。

彼のリーダーシップの下、ウインドベルは他の町が失敗する中、成功した数少ない都市の一つとなった。

ネルソンは、他の都市が資金や設備の調達に目を奪われ、私利優先の企業に街を荒らされたと批判した。

彼はウインドベルを理解し、尊重する企業だけを誘致することにこだわり、その結果、ウインドベルは独自の魅力を保ち続けた。

彼の功績を称え、駅前に彫像を建立する計画が持ち上がったが、ネルソン自身がこれを拒否した。

彼は、自分の顔が景観を損ない、駅利用者に不快感を与えると考えたのだ。

愛されたこの人物は、アルコール依存が原因で肝機能を損ない、2年前に亡くなった。

享年65歳。彼の息子、ジャック・ネルソンは、父の意志を継ぎ、ウインドベルの市長として街を率いている。

ジャックは、父の影響を強く受けており、市民からは父親の言動を真似ると見られがちだが、彼の血筋を信じる声も多い。

前市長ハーバーの時代には、企業誘致の失敗により工場廃液での汚染が問題となった。

その際、市民は一致してジャックを支持し、「彼なら信用できる」との声が高まった。

ジャックは、環境汚染の主犯であるパルチノン食品を追及し、市長選での勝利を収めた。


パルチノン社はウインドベルから撤退し、倒産したとの噂が広まった。

しかし、その3年後、ウインドベルから200km離れたチェインバーグの山奥で、パルチノン社は巨大な工場を秘密裡に建造し、静かに稼働を開始していた。

この工場の存在は、やがてウインドベルとチェインバーグの運命を大きく変えることになるのだった。
 

ある晩、ウインドベルの市民たちは、空に浮かぶ奇妙な光を目撃した。

それは、チェインバーグの方角から現れ、数分間空を舞った後、消え去った。

光は最初、ウインドベルの上空に10個程度漂っていたが、やがてその数を増し、30個ほどに増えた後、まるでウインドベルの偵察を済ませたかのように、チェインバーグに引き返していった。

この光は、SNSに投稿され、次第に「ウインドベルの光」として知られるようになり、人々の間で様々な憶測を呼んだ。

一部の市民は、これがパルチノン社の秘密の実験の結果だと囁いた。

他の人々は、もっと超自然的な現象だと主張した。

しかし、真実は誰にもわからなかった。

 

つづく

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