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大臣に就任したタントは、アラアラ国の人々が長い間抱えていた大きな問題に、さっそく着手しました。
それは、山の頂上に住む「ドゥーム・ツリー」と呼ばれるお化け植物でした。
この植物は、長い枝と鋭い葉を持ち、まるで生き物のように動き回り、山へと近づこうとする誰にも容赦しませんでした。
この植物は、単なる自然の脅威ではありませんでした。
実際、アラアラ国の各部族が、この植物が生息する土地の所有権をめぐって何世紀にもわたって争ってきたのです。
まるで砦のように見えました。
植物の鋭い枝と動き回る姿は、部族間の敵対関係そのものを象徴しているかのようでした。
「この植物は呪われている」タントはそう理解しました。
この植物を征服することは、単に自然の脅威を取り除くことではない。
それは、部族間の分断と対立という根深い問題に、平和的な解決策を示していく砦のようなものだ。
多くの部族がこの植物を征服しようとしたものの、みんな失敗している。
それぞれの部族の中に、この島を手中にしたいという潜在的な願望があるんだ。
その願望を引き寄せているのが、あのドゥーム・ツリーなのだ。
「どうしても私がこの植物を倒さないと、国の争いは終わらない」
タントは心の中で決意しました。
彼はアラアラ国王の大臣として、みんなをまとめる力を持っていましたが、他の部族と違う点が一つありました。
それは、武力に頼らないという信念です。
彼は耳が聞こえないので、植物の発する音を頼りにできないため、植物の動きを目で捉える必要がありました。
そんなある日、タントは山のふもとの村に住む賢い老人から一つの秘密を教えてもらいました。
「そのドゥーム・ツリー、特定の野草の匂いを嫌がるんだよ」
老人は静かに言いました。
タントはその野草の名前をしっかりと覚えました。
山を征服する方法は力で戦うことではなく、この植物が嫌いな匂いを使うこと。
「これならみんなを傷つけずに、植物を退けることができるかもしれない」
そう思ったタントはすぐに準備を始めました。
次の日、タントは山のふもとの村から特別な野草シャドウリーフを手に入れ、山へ向かいました。
歩いていると、山がどんどん近くなり、タントの心は少しだけ怖くなりました。
耳が聞こえない分、周囲を注意深く見渡しながら、彼は勇気を出して歩き続けました。
「もう少しだ」
タントは自分に言い聞かせました。
途中で何度もそのドゥーム・ツリーの枝が揺れ、風のように襲ってきましたが、タントはそのたびに冷静に避けました。
彼は動きのわずかな兆候を目で追い、素早く対応しました。
突然、山の頂上から轟音が響き渡り、ドゥーム・ツリーがその巨大な姿を現しました。

枝はまるで鞭のようにしなり、鋭い葉が空を切り裂く音が響きます。
「グワァァァ!」
ドゥーム・ツリーの咆哮が山全体にこだまし、その恐ろしい姿にタントは一瞬足を止めました。
「来るぞ!」
タントは心の中で叫び、身構えました。
次の瞬間、無数の枝が一斉にタントに向かって襲いかかりました。
まるで生き物のように動き回る枝は、何千人もの兵士を次々と叩きのめすかのように、猛烈な勢いでタントに迫ります。
「シュバッ!シュバッ!」
枝が空を切る音が連続し、タントはその攻撃を避けるために素早く身を翻しました。
「これが、ドゥーム・ツリーの本性か…!」
タントはその圧倒的な力に驚きながらも、冷静さを保ちました。
枝が地面に叩きつけられるたびに、土煙が舞い上がり、周囲の木々が揺れ動きます。
「負けるわけにはいかない!」
タントは自分に言い聞かせ、シャドウリーフを取り出しました。
「これで終わりだ!」
タントはシャドウリーフを高く掲げ、その香り高い粉末をドゥーム・ツリーに向けて放ちました。
すると、ドゥーム・ツリーは突然動きを止め、その巨大な枝がゆっくりと後退していきました。
「うまくいった!」
タントは心の中で叫びました。
植物の枝が大きく振り回され、葉がカサカサと音を立てて動いているのが見えます。
「これが、アラアラ山のお化け植物か」
タントはその姿を見つめました。
でも、怖がってはいけません。
タントは冷静に、腰から取り出したシャドウリーフを一つずつ手に取ります。
そして、植物に向かってその香りを広げました。
すると、驚くべきことに、ドゥーム・ツリーはピタリと動きを止めました。
タントが香りを近づけるたびに、ドゥーム・ツリーは少しずつ後退していきました。
「効果ありだな!」
タントは心の中で叫びました。
武力を使うこともなく、知恵を使って植物を退ける確信を得ると、タントは部下とともに無事に山を下り、国へ戻りました。
それから、ある程度ドゥーム・ツリーを山上まで退けると、兵全員で取り囲み、シャドウリーフの粉末を散布しながら、火を点けました。
「これからは武力ではなく、知恵を使って問題を解決していこう。明日か明後日には、ドゥーム・ツリーは枯れて無くなるよ」
タントは人々の前で誓いました。
つづく
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