サイレント・レジスタンス 19 覚醒したろう者たち 公開日:2025年9月3日 社会派フィクション 19 長い間、身体の震えが止まらなかった。 逃げ続けた末に辿り着いたのは、小さな公園だった。 時刻は14時10分を少し過ぎたところ。 晴れているのに、この公園には僕以外誰もいない。 滑り台とブランコ、そしてトかイレだけが […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 18 声なき逃避 更新日:2025年8月30日 公開日:2025年8月27日 社会派フィクション 18 介護施設は肩の高さのコンクリート塀に囲まれていて、門から入ると駐車場スペースがあり、その奥に建物が建っている。 門の中に2台の救急車が玄関に停まっていた。2台とも回転灯が点灯していた。 夜勤明けのスタッフから、ここ […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 17 無言の包囲網 更新日:2025年8月30日 公開日:2025年8月20日 社会派フィクション 17 昨夜は雨が降らなかった——それだけが幸いだった。 壊れた寮舎の瓦礫をかき分けながら、僕は昨日拾ったパソコンの充電コードを探していた。 コンクリートの破片や歪んだ鉄骨が足元に散らばり、一歩踏み外せば怪我をしそうだった […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 16 謎の銃と手話放送 公開日:2025年8月13日 社会派フィクション 16 僕たちは、アイドラゴンの番組にあの二人が映っていた理由について議論を重ねた。 五人全員が確認していたのだから、見間違いではない。しかし、なぜ二人があの場所にいたのかは、依然として謎のままだった。 施設で一夜を過ごし […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 14 静かな崩壊 公開日:2025年7月30日 社会派フィクション 14 食事スペースでは、午後のレクリエーションの準備が始まっていた。 僕が現れると、そこにいたスタッフたちの表情がぱっと明るくなった。外の騒ぎに怯えていたのだろう。僕の無事な姿を見て、明らかに安堵していた。 近くにいた女 […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 13 監視網 公開日:2025年7月23日 社会派フィクション 13 空に再び現れたドローンは、今度は5機だった。 その低い機械音に続いて、サイレンが響いた。3台のパトカーがパトランプを点灯させながら、猛スピードで公民館に向かって駆けつけてくる。急ブレーキの音が夜の静寂を破り、駐車場 […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 12 包囲 公開日:2025年7月16日 社会派フィクション 12 包囲 午後の業務が始まる時間になっても、僕はまだ屋上にいた。船橋たちのワゴン車が公民館に戻ってきたからだ。 車内にあった段ボール箱はもうなくなっていた。どこかに捨てたか、隠したのだろう。船橋と青年が車を降り、建物の […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 11 敵情視察 公開日:2025年7月9日 社会派フィクション 11 翌日は日勤だった。 昼食を済ませた僕は、いつものように屋上へ足を向けた。フェンスに身を預け、眼下に広がる住宅街を見下ろす。昨夜の出来事が頭から離れない。施設裏の公民館が、まるで秘密を抱えているかのように佇んでいる。 […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 7 静寂の証人 公開日:2025年6月11日 社会派フィクション 7 翌朝、窓から差し込む陽光が僕の頬を撫でた。久しぶりに気持ちの良い朝だった。 寮の食堂で簡素な朝食を済ませると、体を動かしたくなって近所の公園へ足を向けた。 緑陰の小径をゆっくりと歩き、ベンチに腰を下ろす。 ジャングル […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 6 混線する夜 公開日:2025年6月4日 社会派フィクション 6 混線する夜 職員寮の住民たちは夜になると、テレビの置かれたフリースペースでくつろぐのが日課だった。 この寮のテレビは少し変わっている。モニターは普通の大型液晶ディスプレイだが、放送内容が独特だった。やたらと手話が多い […] 続きを読む