35 恐怖の面接室
立山が案内してくれた場所は、壁一面にモニターディスプレイが張り巡らされたオフィスだった。
ディスプレイには大勢のエンジニアらしき男たちが、パソコン作業をしている様子が映っていた。
彼らはゾンビではなく、皆生身の人間のように見えた。
「あれがエイリアンの頭脳だよ」
立山が言った。
「そしてドローンの生命線でもある。端末からアンテナを経由して発信され、ドローンはビルから飛び立つ……」
立山はそこまで言うと、嬉しそうに僕たちを振り返った。
僕と平石は、思わず目を逸らした。
船橋が言ってたエイリアンは、もしかして人間だったのか?
「なかなかイカすだろ。俺が組んだプログラムじゃないけどさ……」
彼はそう言うと、また顎をしゃくって、別のディスプレイを促した。
ディスプレイに映っていた光景は、暗がりの中だった。
暗室というか、真っ暗ではないが、意図的に暗くした部屋だった。
「あれを見てみな。公務員ばかりじゃなく、一般人にまで活用範囲を広げていくつもりらしい」
僕たちは注意深く目を凝らした。
暗がりの奥には、わずかに明るく光っている箇所があった。
光の中に焦点を合わせてみると、そこには男女がパイプ椅子に並んで座り、じっと顔を伏せてデスクを凝視していた。
男女とも面接官のようなスーツ姿だった。
「これから面白いショーが始まるよ」
暗い部屋に、若い男がドアを開け中に入ってきた。
部屋には窓すらなかった。
デスクの上には書類が置いてあった。履歴書のコピーかもしれない。
若者が挨拶しても、面接官はなかなか顔を上げようとしなかった。
若い応募者は一礼し、椅子に腰を下ろした。

すると、面接官の二人は、小刻みに身体を震わせ始めた。
応募者は不安になって、椅子から立ち上がった。
口の形から悲鳴か驚声を上げているのが分かった。
それに反応して、面接官も立ち上がった。
応募者の表情には、困惑と恐怖が浮かび上がっていた。
立ち上がった面接官の顔色は、ゾンビそのものだった。
口内は血まみれで、目は白く濁っていた。
二体のゾンビは、応募者に向かって咆哮しつつ走っていった。
応募者は驚いて悲鳴を上げた。ゾンビから必死で逃れようとした。
若者は入室してきたドアノブを回したが、なぜかドアには鍵がかかっていた。
応募者は必死にドアを叩いた。が、誰も助けてくれない。
ゾンビはとうとう応募者に追いついて、後ろから首に噛みついた。
応募者は痛みと恐怖で泣き叫んだ。
膝から床に崩れ落ち、自身の流した血液の中で、若者が息絶えるのが見えた。
つづく

Follow @hayarin225240