11 先客
一行は丘を下りて、海に向かって歩き始めた。
だが、その途中で、彼らは驚くべき光景を目にした。
それは、カプセルのような形をした物体だった。
彼らの乗っていた宇宙船の救命カプセルではなかった。
別の宇宙船の救命カプセルだった。
彼らのカプセルよりコンパクトで、色も違っていた。白と青のストライプで飾られていて、一際目に付いたのが、カプセルのドアにある地球の国連宇宙機関のマークだった。
「あれ、見て。あれは、国連のカプセルだよ」
レオが叫んだ。彼は宇宙に詳しかった。国連の宇宙船をネットでよく見ていたからだ。
「本当だ。もしかしたら、中に人がいるかもしれない」
脇田はそう言って、カプセルに駆け寄った。彼はカプセルのドアを叩いた。中からは何の音もしなかった。彼はドアのボタンを押した。ドアは開かなかった。
ドアの隙間をこじ開けてみた。中には誰もいなかった。カプセルは空だった。
「誰もいないよ。でも、このカプセルは新しいね。つい最近、ここに着いたんじゃないかな」
脇田はそう言って、カプセルの外壁を調べた。カプセルは傷や汚れが目立った。獣たちの仕業だろう。
『じゃあ、中にいた人はどこに行ったの?』
ユキオが手話で訊いた。マリコが脇田に通訳した。
「わからない。でも、もしかしたら、このカプセルから出て、カプセルを捨てたのかもしれない。だとしたら、彼らは救助されたのかもしれない」
脇田はそう言って、カプセルの周りを見回した。すると、彼はカプセルの近くにある小さな穴に気づいた。それは、カプセルの着陸によってできたものではなく、人工的に掘られたもののようだった。穴の中には、何かが光っていた。
「あれ、見て。あそこに穴があるよ。中に何かが光ってる」
脇田はそう言って、穴に近づいた。
彼は穴の中に手を伸ばして、光るものを取り出した。
それは、小さな金属の板だった。板には、文字が刻まれていた。
地球の言語ではなく、別の言語だった。脇田はその言語を読むことができなかった。
「これは何だろう。別の惑星の言語かな」
脇田はそう言って、板を子供たちに見せた。レオもその言語を読むことができなかった。
「これは、国連のカプセルの人たちが残したものなのかな。それとも、この惑星の知的な生命体の仕業なのかな」
翔太が言った。彼はレオほどではないが、比較的好奇心旺盛な少年だった。
「どちらにしても、これは重要な発見だよ。これは、この惑星の歴史や文化に関する手がかりになるかもしれない。もしかしたら、この惑星には、人間とは違う知的な生命体がいるのかもしれない」
レオはそう言って、板を大事そうにポケットにしまった。
レオを招へいしたのはマリナスの科学者たちだった。彼はこの惑星の謎を解き明かすのに、意欲と燃やしている様子だった。
「じゃあ、この板を持って、国連のカプセルの人たちを探しに行こうよ。彼らなら、この言語を読めるかもしれないし、この惑星についてもっと知っているかもしれない」
翔太が言った。妹の美咲はまだ翔太の背中に隠れるように立っている。一人でいるのが怖いのか、マリコが翔太の側から離れる様子はない。でも泣くことも少なくなっていた。
「そうだね。それが一番いいかもしれない。でも、彼らはどこに行ったのかな。このカプセルから遠くには行けないはずだよ」
脇田はそう言って、カプセルの周りに足跡を探した。
すると、彼はカプセルの反対側にある小道に気づいた。
それは、カプセルの着陸によってできたものではなく、人工的に作られたもののようだった。小道は、森の中に続いていた。
「あれ、見て。あそこに小道がある。森の中に入ってる」
脇田はそう言って、小道に近づいた。
彼は小道に沿って、森の中に入っていった。
彼は、国連のカプセルの人たちが、この小道を通って、森の中に行ったのだと言った。
子供たちは、彼らに会えるのだと期待を膨らませた。
「待って、脇田さん。森の中に入るのは危ないよ。あの化物どもがいるかもしれないよ」
レオが言った。子供たちは森に入るのをためらった。
「大丈夫だよ。昼間は、あの化物どもは出てこないよ。それに、国連のカプセルの人たちがいるかもしれないんだ。彼らに会えたら、助けてもらえるかもしれないんだ」
脇田はそう言って、子供たちを説得した。
彼らは脇田に従って、森の中に入っていった。一行は鈴なりになり、小道に沿って、森の奥へと進んでいった。
森は深く、暗く、静かだった。木々は高く、枝は密に、葉は厚く茂っていた。光はほとんど届かなかった。空気は湿って、重かった。
彼らは息を切らしながら、歩いた。
脇田は空気が薄いと感じていたが、そんな感覚も身体を動かすうちに無くなっていった。
彼らは動物の気配らしきものを感じたが、実際に姿が見えることはなかった。彼らは獣たちに襲われないように、注意深く、静かに、歩いた。
やがて、一行は小道の終わりに着いた。そこには、大きな洞窟があった。
洞窟の入り口は、岩で覆われていた。
岩には、文字が刻まれていた。それは、脇田が見つけた板と同じ言語だった。
脇田は板を取り出して、岩に刻まれた文字と比べた。
彼はその言語を読むことができなかったが、何か共通点があるような気がした。
「これは、同じ言語だよ。板と岩に書かれているのは」
レオはそう言って、他のメンバーに金属板を見せた。彼らも同じことに気づいた。
「じゃあ、これは、この惑星の住民が書いたものなのかな。それとも、国連のカプセルの人たちが書いたものなのかな」
マリコが言った。彼女は謎に興味を持った。
「わからない。でも、もしかしたら、この洞窟には、何かがあるのかもしれない。この文字は、何かを示しているのかもしれない」
脇田はそう言って、洞窟に近づいた。
彼は洞窟の先に光が見えるのに気づいた。
『あれ、見て。洞窟の中に光があるよ。人がいるのかもしれない』
ユキオが手話でメンバーに注意喚起した。
それは、人工的な光ではなく、自然光だった。
洞窟は行き止まりではなく、トンネルになっているのだ。
彼は洞窟の先に人の気配を探した。
彼は国連のカプセルの人たちが、この洞窟にいるのだと思った。
子供たちは彼らに会えるのだと期待した。
脇田は口元に指を立てて「シーッ」と沈黙を合図した。
彼らは脇田に従って、洞窟に入っていった。
トンネルの先に何があるのか、知らなかった。
トンネルを抜けると、何らかの出会いが待っているのだと、誰もが期待した。
つづく
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