世界から少しずれた誰かの、声にならない叫び。ささやかな祈り

時の彼方で 14.同朋

時の彼方で 14.同朋

14

月明かりが薄れ、闇が深くなった頃、町はずれの葛西道場の中庭に人影が集まっていた。

月に照らされた木々の影が、不気味に揺れる中、葛西道場の面々が顔を寄せ合っていた。

葛西源生の顔には不安と怒りが入り混じり、額には冷や汗が光っている。

「何やつじゃ!」

葛西源生が声を荒げた。

その声は夜の静けさを破り、周囲の木々を震わせるようだった。

突如、闇の中から低い声が響いた。

「案ずることなかれ、我はドン・パルマ。敵ではない。そなたたちの同朋じゃ」

その声の主は、月明かりに照らされた顔を現した。

ドン・パルマと名乗る長身の男は、異国の宣教師のような装いに身を包み、胸には十字架が輝いていた。彼の髪は長く、冷徹な目つきで葛西たちを見下ろしていた。

「大久保藤淳を葬り、細川藩・合志家の剣術指南役として貴殿の望みを実現させてやろう」

ドン・パルマの言葉に、葛西源生の目が驚きで見開かれた。

「何と申すか!?」

葛西源生の声は震えていた。

藤崎閃電が咄嗟に剣に手をかけ、怒鳴った。

「戯(たわ)け申すな!」

彼が剣を抜こうとした瞬間、影から現れた男に腕を掴まれた。

「貴様、何をする!」

閃電は叫んだが、次の瞬間、男の腕は閃電の右腕を絞め上げていた。

「は、離せ!」

閃電は苦痛の声を上げた。

葛西源生も剣に手をかけようとしたが、突如現れた別の男に阻まれた。

「何をする!」

葛西も叫ぶ。

「いらぬ手出しはするな!黙って聞け!」

パルマの横にいた男が厳しい口調で命じた。顔に深い皺が刻まれ、鋭い目つきの男だった。

「我が名はモンテロ。動かんほうがいい、命が惜しければな」

もう一人の男が冷ややかな声で「俺はバルボアだ」と背後から名乗った。黒いコートに身を包み、その下には白いシャツが覗いていた。

葛西たちは恐怖に震えながら、ドン・パルマの言葉に耳を傾けた。

月光に照らされたドンの顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

「大久保道場には、予想外の助っ人が現れたようだな」

ドン・パルマの言葉に、葛西源生は首を傾げた。

「助っ人!?武蔵春信のことか?」

葛西の声には、不安と怒りが混ざっていた。

ドン・パルマは首を横に振った。

「いや、今夜の闇討ちを邪魔した連中には、異界から迷い込んだ小僧らがいたはずだ」

その言葉に、葛西たちの間で動揺が広がった。

夜風が木々を揺らし、影が不気味に踊る中、モンテロが口を開いた。

「故に我々が諸君らの後ろ盾となろうというわけだ」

葛西源生は眉をひそめ、疑わしげに尋ねた。

「その若造どもは一体、どこの者でござるか?」

ドン・パルマは冷笑を浮かべながら答えた。

「小僧らが何者かなど知らずともよい」

彼の声は氷のように冷たかった。

「貴殿らは大久保藤純と武蔵春信を、我々は若者たちを片付けるだけのことだ。その準備を整えよ」

バルボアが言葉を添えた。

「逡巡することはなかろう。互いの望みを叶えるための道なのだから」

葛西源生は躊躇していたが、決意を固めたようだった。渋々応えた。

「心得た。それで、如何にすればよいのか?」

ドン・パルマの目が月明かりに不気味に光った。

「我々はまず、武蔵春信を誘い出すべく、オトリを用意しよう」

その言葉とともに、夜の闇がさらに深まったかのように感じられた。

大久保道場の運命が変わろうとしている。

木々のざわめきだけが、この不吉な密談の証人となっていた。

 

つづく

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