サイレント・レジスタンス 8 覗き穴の向こう側 公開日:2025年6月18日 社会派フィクション 8 公民館のドアは、あっけないほど簡単に開いた。 薄闇の中に足を踏み入れると、最初の部屋は死んだように静まりかえっていた。船橋の姿はどこにもない。 図書室らしき部屋だった。壁に沿って並んだ書架と、中央に置かれた大きなテー […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 7 静寂の証人 公開日:2025年6月11日 社会派フィクション 7 翌朝、窓から差し込む陽光が僕の頬を撫でた。久しぶりに気持ちの良い朝だった。 寮の食堂で簡素な朝食を済ませると、体を動かしたくなって近所の公園へ足を向けた。 緑陰の小径をゆっくりと歩き、ベンチに腰を下ろす。 ジャングル […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 6 混線する夜 公開日:2025年6月4日 社会派フィクション 6 混線する夜 職員寮の住民たちは夜になると、テレビの置かれたフリースペースでくつろぐのが日課だった。 この寮のテレビは少し変わっている。モニターは普通の大型液晶ディスプレイだが、放送内容が独特だった。やたらと手話が多い […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 5 介護の日常 公開日:2025年5月28日 社会派フィクション 5 急いで決めた転職だったが、新しい職場の就業環境は思っていたよりもきちんとしていることがわかってきた。 高層ビルに囲まれた静かな公園エリアに、その介護施設はひっそりと佇んでいる。 入居者は約百人。自力歩行ができる高齢者 […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 4 手話が紡ぐ壊れた夢 公開日:2025年5月21日 社会派フィクション 4 僕は新しい職場、介護施設で働き始めた。 プログラマーの夢を半ば諦め、住んでいたアパートを引き払い、この施設の職員寮へと引っ越してきたのだ。 ここは家賃が周辺相場の半額以下で、食費を払えば安く食事も提供してもらえる。 […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 3 手のひらの言葉 更新日:2025年5月17日 公開日:2025年5月14日 社会派フィクション 3 施設の中は夕食の真っ最中だった。 大きなテーブルを囲むお年寄りたち。懐かしい光景だけれど、僕はこの日常に飽き飽きして辞めてしまった人間だった。 空の食器を抱えたジャージ姿の女性スタッフとすれ違い、僕は軽く会釈する。 […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 2 夕暮れの選択肢 更新日:2025年5月17日 公開日:2025年5月7日 社会派フィクション 2 ハローワークを出ると、僕はビル街をぶらぶらと歩き始めた。 近くには、すぐに面接してくれる老人ホームがあるらしい。一時間後に担当者と会う予定だった。 空はどんよりと曇っている。この街に来て、もう三年になる。 パソコンが […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 1 音のない街角で 更新日:2025年5月17日 公開日:2025年4月30日 社会派フィクション 1 灰色のコンクリート壁が道の両側に伸び、無秩序な落書きがその表面を覆っていた。 壁に挟まれた細い道の先で、大きなトンネルが口を開けている。一台の大型トレーラーがエンジンを唸らせながら、ゆっくりとその暗がりに吸い込まれて […] 続きを読む
サイレント・レジスタンス 更新日:2025年6月17日 公開日:2025年4月30日 社会派フィクション あらすじ 耳の不自由な青年が描く、異星からの侵略に立ち向かう静かな戦い。 プログラマーになる夢を胸に、熊本から福岡へ移り住んだ聴覚障がいを持つ主人公。しかし現実は厳しく、ハローワークで紹介されたのは介護の仕事だった。本意 […] 続きを読む